片づけで身につける、しなやかな生き方
「片づけ」と聞いてどんなことを思い浮かべますか?
引き出しの中のいらないものを捨てたり、食器棚に置いてあるグラスやお皿をきれいに並べたり、床に置きっ放しの洗濯物をしまったり…。そんなイメージを浮かべる人が多いと思います。ですが、片づけクラブでの過ごし方は本当に自由で、10分間の片づけタイムには個性が出ます。
もちろん、多くの参加者は片づけをしているのですが、なかにはウクレレの練習をする人、散歩をする人、眠気を片づける人、そして参加できない日は「魂参加します!」と言っている人だっているんです。
初期メンバーのひとりである藤井京子さん(以下、きょうさん)は、みんなが思い思いに過ごす片づけクラブが好きだと言います。きょうさんが語る片づけクラブの魅力から、うまく気を抜きながらも前向きに動ける、しなやかな生き方のヒントを見つけました。
プロフィール
藤井京子(ふじいきょうこ)さん 歴史ネタの配信や簡単に着付けができる講座の開催など「やりたいことをやる主婦」として活動している。コロナ禍でおうち時間が増えたことをきっかけに、zoomでいろんなコミュニティに参加していたところ、片づけクラブに出会う。周りの人が楽しそうに参加していたのが入部の決め手だった。
毎日にメリハリができて、動ける自分になれた
もともと入部前から朝型人間だったので、早起きが苦ではありませんでした。早起きしてやっていたのは、家族のために朝ごはんやお弁当を作ったり、散らかっている部屋を片づけたりなど、今やっていることと同じようなことです。
でも、朝一人で家事をやることに孤独を感じていました。「どうして私だけがやらなければいけないの?」と思えて、楽しくなかったですね。それが片づけクラブに入部すると、朝から画面越しにたくさんの人が集まって「さぁやろう!」と、一斉にできるのがうれしかったです。
片づけを誰かと一緒にすることで、みんなそれぞれ頑張っていることを知れたのも、私にとってはよかったことでした。片づけクラブに入部する前は、夜のうちにお皿洗いができず次の日の朝に持ち越してしまったら「家事ができてない」と落ち込みがちな私だったので。片づけクラブで朝にお皿洗いをする人を知り、気持ちが楽になりました。
あとは、10分間と決められた時間を意識しているとメリハリができて、時間がうまく使えるようになりましたね。以前よりサクサク家事をこなせています。そこで「家事代行のお仕事ができるんじゃないか?」と思い、家事代行のお仕事を始めました。お仕事が増えたので収入アップにも繋がっています。やろうと思ったことに取り組みやすい自分になれたと思います。
片づけクラブは、安心感がある“家”のような場所
早起きの私でも、入部して1週間くらいは朝からzoomを繋げて、画面オンで参加するのは少しキツかったですよ。でも、すぐ慣れました。長く続けていくなかで、しんどいなと思ったことはあまりないです。
昔は旅行先であっても、無理にでも出ようとする真面目な一面がありましたが、次第に「休んでもいいや」と思えるようになりました。今では休みながら続けています。休んだり片づけがうまくできなくても、「できていない、ダメなんだ」と自分にダメ出ししなくてもいいと思わせてくれる雰囲気が、片づけクラブにはあります。
片づけクラブは、いつでも戻って来られる、安心感がある場所です。例えば、子どもたちが好きなことをやっていても、お腹が空いたら戻ってくる家みたいな(笑)。
生活リズムが整うと心も身体も楽になる
そうですね。片づけが終わったあとにゆっこちゃんのお話タイムがあるのですが、その時間などで、ゆっこちゃんは「休んでもいい」「寝ててもいい」「1回やめてみるのもいい」と言ってくれるんですよね。
そのような言葉は「あなたがいいと思うものがいい」という考えが根底にある感じがして、ゆっこちゃんは器が大きくて懐が深いなといつも思っています。
あとは、10分間の片づけタイムにみんながやりたいことをしているのも好きです。参加するペースも人それぞれ。毎日頑張っている人もいれば、のんびりやっている人もいる。自分のペースで参加できます。
自由な環境だからこそ、自主的にやろうとする人が多い気がしますね。片づけがうまくできないから、ゆっこちゃんにどうにかしてもらおうと思っている人は、いないのではないでしょうか(笑)。
ハードルを低くして、まずは1ヶ月やってみる
とりあえず、「1ヶ月続けてみるといいと思います」とお伝えします。実は初めの頃、私はゆっこちゃんに気後れしていたところがありました。「フルタイムで働いて、子ども3人を育てて、私には信じられない生活をしている。しかも家も綺麗!すごい人だな」と。
でも、続けていたら今ではゆっこちゃんが身近な存在に思えています。ゆっこちゃんはわかりやすいたとえで、片づけや日常をよりよくしていく秘けつを話してくれます。家族をうまく巻き込んで家事を進める方法や、あまり考え方をキツキツにしない時間の使い方とか。無理なくできるものばかりなので、真似しようと思えます。
また、有料であることにハードルを感じる人がいるかもしれませんが、ゆっこちゃんが毎月21日間、しっかり関わってくれるところに私は価値を感じています。1日限りの単発講座と同じような費用で、毎日片づけや心理学の講座を受講できているような内容の濃さがあります。
毎朝、身なりを整え、zoomの画面をオンにしてキラキラしなくてはいけないわけでもありませんし(笑)。(実際、画面オフ参加でもOKです!)ハードルを低く考えてもいいのではと思います。
おわりに
きょうさんのインタビューで印象に残った言葉があります。それは「きょうさんにとっての片づけとは?」と質問した時の回答でした。
「人生、後半になるといろいろできないし、選んで絞ってやりたいことをやっていかないと、それこそ楽しくない。だから、自分にとって大事なものを選びやすくするために片づけをしていると思っています。物だけではなく、何をやるかもそうです。人間関係も同じ。人生を整える道筋を作れるのが『片づけ』です」
片づけを通して人生を見つめる言葉。きょうさんはさらっと答えていましたが、こうして文字を起こしてみると片づけの奥深さを感じます。
日常生活は小さな選択の連続でできている。あと5分寝るか、起きるか。外食にするか、自炊にするか。ものを置きっ放しにするか、しまうか。望む未来のための選択がしたいのに、疲れて望まない方を選んでしまうことだってある──。
そんな時は少し休んで、きょうさんのように心の声にしたがって選択を繰り返していたら、少しずつでもちゃんと前に進めるのではないかと希望が持てました。息を吸うように自然な流れで人生の“ベストな選択”を重ねる訓練は、今いる部屋の片づけから始まるのかもしれません。
ライター : 紗矢香